BENZY(MC・DJ)

 70’sのUSクラブカルチャーについて叙述した本「ラヴ・セイヴス・ザ・デイ」の帯にはこんな言葉が踊る。


時代が移ろうと、ダンスフロアから発せられるメッセージは不変だ。

 つまりは現場。ここしかねんだぜ感。それはクラブに限らず、ライブやフェスに行ったことがある人間なら身体で理解しているはずだ。その現場の指揮者がDJであり、中でも彼がふるうのは真っ黒いタクトだ。

BENZY(DJ・MC)
若者達にクラブシーンを伝えていくCREW「NOMADS」に所属するDJ。
HIPHOP、R&Bを中心とした選曲を得意とする。イベント「NOMADS」は平均150人以上の人を集める。また、ストリートブランドINTERBREEDとのコラボなど、音楽の溢れる場を通し、様々なリンクを生み出そうとしている。
Twitter @benzy_nomads
HP http://www.wix.com/nomadstokyo/nomads

 音楽を通じて色んな人と出会えた

 
 HIP HOPのフロアDJ、BENZYが皿を回し始めたきっかけは、高校時代に通っていた服屋で誘われたからで、そもそもこのジャンルは好きじゃなかったという。 

 「Yo-Yoって感じが嫌だった」

 練馬ボーイはそれでも高校の終わりにはターンテーブルを買い、以来ずっと“地下の住人”だ。 彼の昔を知る先輩などに印象を聞いた。「おとなしい 、腰低い」それこそ、ラップは“チェケラッチョ!”みたいなバイアスを持っていたら意外かもしれない。けど彼は「社交性とか目上の人に対する礼儀とか言葉遣いはDJになってすげー学んだ」と話す。そこに、よくそこかしこで見かける、ファッションでDJをやってるワックの臭いは一切無い。

「DJをして、人間として成長できた。音楽を通じて色んな人と出会えた」

彼にとってDJとは人と繋がるツールだ。


 便座からです


 その場にいる人が楽しめるよう心がけてきた。その反面、きっとそれとは表裏なのだろう、人に合わせることに疑問も抱いた。過去に後悔は全くないが、それで も彼は変化を恐れない。DJは趣味にして、来年からラッパーとして本格的に活動を始める。そもそも、BENZYの由来は?

「腹弱くて…よくトイレ行ってたんで。便座からです」
 
 先輩に名付けられたその名前はリアルシットを生み出すにはもってこいの名前でもある。


 先輩に蹴っ飛ばされて、やれよって言われて


 日本最大のフリースタイルMCバトル 「UMB」の9月に行われた埼玉予選にエントリー。来年からとは言っても、すでに胎動はしている。即興でビートに言葉をのせる楽しさはいつ覚えた?と聞くと「初めは、先輩に蹴っ飛ばされて、やれよって言われて、そこからです」。“Kick a rhyme”の理由としてはうまくできすぎているだろう。渋谷VUENOSやGAME、BALLなどで現場に立ってきた男は何が言いたくなってマイクを握るのか。

「普通に働いて、生きることもできるけど何か形に残したかった。そう考えたときにラップだった」


 低音響く現場で会いましょう


 フロアから発せられるメッセージは不変。その中身は?
一つ間違いないのは、音楽を楽しむということ。なのに、「チャラい音楽や雰囲気が跋扈している」と話す。クラブカルチャーにおいて景気の良さは大事な要素ではある。ただそのせいで純粋に音を楽しめていない状況がある、と。この問題意識は彼が所属するNOMADS の命題でもある。

 HIPHOPは誰でも楽しめる敷居の低い音楽だと彼は言う。純粋に音を楽しむ場を―。それを求めている人はNOMADSの動きをフォローしてみてほしい。BENZY自身もクルーでの活動に注目してほしいと語る。

 話を現在に戻そう。現場だ、とか言ってつらつらと言葉を綴ってきたけど、実は僕自身BENZYのDJイングをまだ観ていない。それに、いまやMCだ。見かけたら、気軽にバトルを仕掛けてみたらいい。彼もきっとそういう風に人と繋がっていくことを望んでいるように思う。それでは皆さん、低音響く現場で会いましょう。

 

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