Park by TAO Bros.(Fashion Brand)

 マテリアル・ビッチが溢れ返っている2014年を見まわすと、合計何人がちゃんとリアルな服を纏っているのだろう、とふと思う。現行のリアルな服装とは何だろう。TAO Bros. のJpとHiLeeは「見た目だけにとらわれず、カルチャーや自分たちの生活を大切にしていること」と語る。つまるところ、2人が昨年12月に立ち上げたファッションブランド「Park by TAO Bros.」も、そういった要素や文脈を重んじる。



外界とは隔てられた狩猟場のことだ


 parkの原義は、中世ヨーロッパの貴族たちがハンティングを楽しんだ、外界とは隔てられた狩猟場のことだという。ファストファションなどを取り込まず、自分たちの好きな事物を服に落とし込み、2人の感性で生み出す場に—。そんな思いを名に込めた。

 今回のA/Wでは計6点を数色展開。ラギッド且つ機能美を追求し、それらを踏まえ生地にもディティールにもクラシカルなこだわりが注がれたアイテムが並ぶ。ジャケットやベストには、ハンティングウェアにみられるガンパッチを採用するなど、直截にコンセプトが反映されている。

 現在は、来季のS/Sに向け、shirtやT、フライトジャケットなど10点ほどを製作中。A/Wでは見られなかったボトムスでもショーツやクロップドパンツを発表する予定だ。

ファッションに音楽がリンクしてきた


 岩手で育ち小学生の頃からおしゃれに興味を抱いていたJpはサッカーに青春を捧げた。青森の大学に進学、この時期に「ファッションに音楽がリンクしてきた」。米軍基地が近くにあったため"文化が濃い"こともあって、ヒップホップ中毒に。この黒い素肌のイナタい女のような音楽と洋服を知りたくて、卒業後に渡加。4年弱トロントでヴィンテージディーラーとして古着卸し屋に勤めた。「ここでの経験がすごい大きくて、自分の服作りの基盤になっている。ヴィンテージ・クロージングの中にも80、90年代のヒップホップのエッセンスは入っていて、この期間に洋服のルーツもヒップホップのルーツも学ぶことができた」。

 一方のHiLeeは東京生まれ東京育ち。高校の頃にB系から服への興味が始まる。大学で「ヘビーデューティーなアメリカっぽいスタンダードなもの、古着、トラッドとか雑食的に惹かれるようになったんだけど」、聴いている音楽はずっとヒップホップが中心だった。4年間のメガネ屋勤務を経て、服について学ぶ時間を求めて専門へ。学校で得た収穫は「一番はJpと知り合えたこと。それと刺激し合える友達ともつながれたこと」と話す。

 文脈や歴史、それを紡いできた人間の息づかいが伝わってくる


 現在の、ラフを起こし2人でブラッシュアップしながらデザインをしていく手法は、まさに互いの共通項であるヒップホップの方法論・サンプリングのシナジーにほかならない。HiLeeは語る。「そこはブランドのアイデンティティーとして大事にしていきたい」。これは言うに値しないほど自明なことだが、B-boyルックなプロダクトを生み出すという浅いトレースではなく、ヒップホップという文化を咀嚼し抽出した要素をアウトプットにつなげていく、ということだと理解しておいてほしい。

 林央子の著書「拡張するファッション」にはこんな記述がある。 新作コレクションや流行情報の量が圧倒的なあまり、人々はそこに自分の思考を挟むことを、機械的に阻止してしまってきたのかもしれない。でも実は、ファッションを入り口にして、さまざまなことを語ることができる」。だとすれば、この"兄弟"が生み出す服からは、文脈や歴史、それを紡いできた人間の息づかいが伝わってくることは間違いない。

「Park」で遊び続ける。


 冒頭の問いかけは、衣に身を包み生きることを選択した人類普遍のテーマで、解答はもちろん時代や社会によって変動していくだろう。しかし揺るぎないこともある。文化や文脈に敬意を払う思考法は軽薄さを生まない。「IZM will never die」。確実にこのマスタープランを持つTAO Bros. は、これからも自分たちの”SWAG”を磨き続けながら「Park」で遊び続ける。



TAO Bros.
ともに1986年生。プロダクトは中目黒「OUTPUT」http://news.output-store.comで取り扱っている。「TAO」はJpが好きな言葉だという「道」から。活動拠点は渋谷、都内。HPは準備中。「Park」とは別ラインの服も構想中で、将来的には「衣食住でトータルプロデュースをしていきたい」。 Jpは大学に推薦で入るレベルのフットボーラー。 HiLeeはDJ jazzy豚の名でフロアDJとしても活動中。 JpがHiLeeを誘った理由は、過去にドゥーラグ(B-boyがよくキャップの下に巻いてるやつ)を着けていたと聞いたから。「ゴリゴリの格好してたことがあるってことは、こいつは本当にHIP HOP好きなんだなーって思って」

 

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